[AI法務]はじめてでもわかる「RAGチャットボット」の魅力と注意点

AI導入と法的課題

1. RAG(Retrieval-Augmented Generation)とは?

近年話題のAI大規模言語モデル(LLM)は、多量の文章データを読み込んで学習し、人間の問いかけに対して、それらしい文章を作り出すのが得意です。

ですが、もともと学習していない情報について質問すると、デタラメな回答をする場合があります。

そんなときに役立つのがRAG(Retrieval-Augmented Generation)という仕組みです。

簡単にいえば、AIが持っている知識だけに頼らず、自分が指定した文書(会社のマニュアルや規則など)を探して、その内容に沿って回答を作る方法を指します。

1-1. RAGの流れ

  1. ユーザーの質問を受け取る
  2. 関連する文書を自社のデータから自動的に検索
  3. 検索結果をもとにAIが回答を生成

こうすることで、自社にしかないオリジナルデータの内容に基づいた正確な回答を返せるようになります。

2. どうしてRAGが注目されているの?

RAGシステムを導入すると、社員がチャットボットに質問するだけで、AIが必要な資料を探して回答を提示してくれます。

たとえば、企業内には就業規則や業務手順書、マニュアルなど、細かなルールや手続をまとめたドキュメントが山ほどあります。「それを全部読んで覚えろ」と言われても大変ですよね。

  • 誤答を減らせる: 通常のAIチャットボットだと、学習していない話題を聞かれた際に的外れな回答をしがちです。RAGなら実際の資料を参照して答えるため、信頼性が高まります。
  • 迅速な情報共有: 大量の書類をいちいち開いて探す手間が省け、業務効率がアップします。
PIROKO

先日のAIに関するセミナーで、不動産管理会社が管理組合への問い合わせ対応にチャットボットを導入するという事例が紹介され注目を集めていました。RAGを使い、居住者からの問い合わせに対して、管理規約や過去の通知文書などを元に正確かつスピーディに回答するシステムで、DX化を目指す内容でした。

3. Agentic RAG(エージェンティックRAG)って何?

RAGの発展形として、「Agentic RAG」という概念も登場しています。これはAIが単に資料を探すだけでなく、“自己評価”を行いながら回答の正確性をチェックする仕組みを組み込んだものです。

たとえば、

  1. 最初にピックアップした文書が正しいか疑問に思えば、別の文書をさらに調べる。
  2. 自分の回答を一度点検して、もし間違っている可能性があれば追加の情報を探しに行く。

といった形で「AI自体が自律的に考える」ステップが加わります。これにより、より高い正確性を追求できるのが特長です。

4. 行政書士から見たRAG導入のポイント

RAGシステムの活用には数多くの利点がありますが、企業の内部文書や個人情報、秘密情報を扱うとなると、法律の観点で押さえておくべき注意点も増えてきます。

4-1. 個人情報保護法への対応

AIが扱うデータに個人情報が含まれる場合は、個人情報保護法上の管理ルールをきちんと満たす必要があります。

  • 外部のクラウドサービスを使う場合、データがどの国のサーバーに保存されるか、利用規約にどんな内容が書かれているかに注意。
  • そもそも社員の個人情報を機械学習に使うことが適切かどうか、社内規程を確認しなければいけません。

4-2. 秘密情報・著作権の扱い

社内規程や業務マニュアルは企業のノウハウが詰まった営業秘密の場合があります。万が一、外部に漏えいすれば不正競争防止法違反の恐れも出てきます。

  • 著作権が設定されている文書を参考資料として取り込む際、必要に応じて権利処理を行うかどうかの検討が必要。
  • AIが引用元をきちんと表示できるか、あるいは引用を省略してしまわないか、といった点もチェックしましょう。

4-3. 利用規約や免責事項

AIチャットボットの回答が必ずしも100%正確とは限りません。もし誤った回答を信じて行動し、トラブルが起こった場合の責任はどこにあるのか? これは非常に大事な問題です。

  • システムを社外に公開する場合、「あくまで参考情報であり、最終的な判断は利用者が行う」といった免責文言を利用規約に盛り込んでおく必要があります。
  • 社内利用であっても、運用ルールや問い合わせ先を明確にして、必要なときに管理者が修正・追加対応できる体制を整えましょう。

6. まとめ

  • RAGの基本: AIが自社ドキュメントを参照することで、正確な回答を行いやすくなる。
  • Agentic機能: AIが「自己評価」しながら回答の信頼性を高める仕組み。
  • 法律・規約の注意点: 個人情報保護や不正競争防止法、著作権などの面で、データ扱いにルールを設ける必要がある。

自社の資料をAIに覚えさせたいけど、データの扱いが不安……という場合には、早めに専門家へ相談することで、スムーズかつ安全にRAGチャットボットを活用できます。

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