はじめに:日本はオンラインカジノを違法としています
近年、オンラインカジノの利用者が世界的に増加しており、日本からのアクセス数も増加傾向にあります。
2021年には世界第3位、2022年には第4位と、日本国内での関心の高さがうかがえます。
しかし、日本国内からのオンラインカジノの利用は刑法によって明確に禁止されており、過去には利用者が摘発された事例も存在します。
Googleは2025年3月にオンラインギャンブル関連コンテンツのポリシーを更新し、オンラインギャンブル関連のコンテンツを許可された国や地域の外にいるユーザーに表示すると規制の対象になると改めて発表しています。
一方で、日本国内ではオンラインカジノが違法とされているにもかかわらず、Googleの広告プラットフォーム(AdMob)では、オンラインギャンブル関連コンテンツの広告が許可されている国の1つに日本が含まれています。
AdMob デベロッパーの皆様 平素より AdMob をご利用いただきありがとうございます。2025 年 3 月、Google は Google パブリッシャー向け制限コンテンツのオンライン ギャンブルに関する規定を更新します。この更新により、オンライン ギャンブル関連のコンテンツを表示することが許可されている国または地域の外にいるユーザーに同コンテンツを表示すると、規制が適用されるようになります。表示が許可されている国または地域は、オーストラリア、ブラジル、カナダ、コロンビア、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、日本、メキシコ、オランダ、フィリピン、韓国、スペイン、トルコ、英国、米国です。
Google AdMob
この矛盾は、日本の法制度とGoogleの広告ポリシーの違いによるものです。
本記事では、なぜこのような矛盾が生まれているのか、オンラインカジノの違法性、景品表示法との関係について解説していきます。
なぜこのような矛盾が生まれているのか?
この矛盾は、日本の法律とGoogleの広告基準が一致していないことが主な原因です。
日本ではオンラインカジノの運営・利用は違法とされていますが、Googleは各国の法制度に完全に準拠するのではなく、独自の基準で広告掲載の可否を決定しているため、日本が「オンラインギャンブル関連コンテンツの広告表示が許可される国」に含まれてしまっています。
特に、日本がGoogleの広告ポリシーにおいて「許可された国」としてリストに含まれている理由として、以下の2つの要因が考えられます。
(1) 日本には合法なギャンブルが存在するため
Googleはオンラインギャンブル全般に関する広告規制を行っていますが、国ごとに一律のルールを適用しているわけではありません。日本ではオンラインカジノは違法ですが、以下のような合法的なギャンブルが存在します。
公営ギャンブル(競馬、競輪、競艇、オートレース)
宝くじ・スポーツ振興くじ
パチンコ・スロット(法律上ギャンブルではないのでグレーゾーン)
これらは国や自治体の管理のもと運営されており、一定の条件下ではギャンブル広告が認められているため、Googleの広告システムでは「オンラインギャンブル関連コンテンツの広告が許可されている国」として日本を含めている可能性が考えられます。
つまり、日本では違法なオンラインカジノでも、Googleのポリシー上では広告掲載が可能となる場合があるため、結果としてオンラインカジノの広告が国内で目にする機会があるのです。
(2) 日本の法執行と広告の管理が異なる
日本の法執行機関(警察・消費者庁など)は、オンラインカジノの利用者や違法な広告を取り締まることができますが、Googleの広告管理システムはそれとは別に機能しています。
そのため、Google上では広告が許可されている一方で、日本の法律ではそれを取り締まるという矛盾が生じています。
日本におけるオンラインカジノの違法性
日本では、オンラインカジノの運営・利用は刑法によって明確に禁止されています。
オンラインカジノの利用は賭博罪や常習賭博罪に当たります。刑法第185条では「賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。」とされ、第186条では「常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。」とされています。
また、日本国内でオンラインカジノの入金や出金といった決済に関与したり、広告・宣伝してオンラインカジノに誘い入れたりすると、「賭博幇助」などの罪に問われることがあります。
警察では、オンライン上で行われる賭博事犯の取締りを強化しています。令和5年(2023年)には、オンラインカジノの利用者や決済に関わった者、オンラインカジノを広告・宣伝した者など、107人が検挙されています。警察庁 文責:内閣府政府広報室
(1) 日本国内でのオンラインカジノ運営は完全に違法
• **刑法第186条2項(賭博場開帳図利罪)**により、日本国内でオンラインカジノを運営することは犯罪とされており、
運営者には1年以上5年以下の懲役が科される可能性があります。
• サーバーを海外に置いたとしても、日本国内で運営・管理していれば違法行為とみなされます。
(2) 日本国内からのオンラインカジノ利用も違法
• **刑法第185条(賭博罪)**により、オンラインカジノをプレイすること自体が違法とされ、
50万円以下の罰金または科料が科される可能性があります。
• 頻繁に利用していた場合、「常習賭博罪」(刑法第186条1項)に該当し、3年以下の懲役となる可能性がある。
• 過去には、海外のオンラインカジノを利用した日本人が摘発された事例が複数存在する。
(3) オンラインカジノの広告・アフィリエイトも違法の可能性
• **刑法第187条(賭博関与罪)**では、違法な賭博に関与し、それを助長する行為も処罰対象となります。
• オンラインカジノの広告やアフィリエイトは、「賭博を助長する行為」(賭博幇助)とみなされ、刑事責任が問われる可能性があります。
3. 景品表示法とオンラインカジノの広告規制
それでは、なぜオンラインカジノの広告やアフェリエイトが規制されるのか景品表示法の視点から考えてみます。
第一にオンラインカジノの広告が表示されてしまうと、消費者が誤認しやすいという問題があります。
景品表示法違反のリスク
景品表示法は、消費者を誤解させるような広告を禁止する法です。
オンラインカジノの広告には、**「簡単に稼げる」「高額配当が得られる」「勝てる」**といった誇大表現が含まれることが多く、これが景品表示法違反に該当する可能性があります。
有利誤認表示のリスク
景品表示法では、「実際よりも著しく有利であると誤認させる表示」を禁止しています。
例えば、以下のようなオンラインカジノの広告は有利誤認表示に該当する可能性があります。
「業界最高の還元率 98%!」(実際にその数値の根拠がない、もしくは一部のゲームにしか適用されない場合)
「初回入金で2倍のボーナス!今すぐプレイしよう」(実際には出金条件が厳しく、容易にボーナスを引き出せない場合)
「高額配当を狙える!」(実際には損失のリスクがあるのに、その部分を強調しない場合)
このように、実際には限定的な条件があるにもかかわらず、それを消費者に誤認させる広告は景品表示法違反となる可能性が高いです。

不実証広告規制のリスク
景品表示法では、「合理的な根拠を示せない広告」を禁止する不実証広告規制もあります。
例えば、オンラインカジノの広告で以下のようなものは違法となる可能性があります。
「この攻略法で勝率80%!」(統計的な根拠がない場合)
「日本人ゲーマーの70%が利用している人気カジノ」(実際にそのようなデータがない場合)
「このゲームで500万円以上の配当を獲得!」(特定のユーザーのケースを一般化し、誤解を招く表現)
広告で謳っている内容について、客観的なデータや証拠を求められた際に証明できない場合、不実証広告規制に違反する可能性があるため、注意が必要です。
まとめ
Googleのポリシーでは日本が「広告許可国」となっているが、これは日本の法律と矛盾する
オンラインカジノの広告・アフィリエイトには「賭博幇助」や「景品表示法違反」のリスクがある
この矛盾した状況の中で、事業者や個人がオンラインカジノの広告に関わることは、刑法違反や景品表示法違反のリスクを伴うため慎重に判断すべきです。Googleのポリシー変更があっても、日本国内の法規制が変わらない限り、オンラインカジノに関連するビジネスには大きなリスクが伴います。
オンラインカジノ関連の広告運営やアフィリエイトを検討している方は、必ず専門家に相談し、法的リスクを十分に理解した上で対応することが重要です。
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